この記事の要点
カナダの大手投資銀行TD Securities(TDセキュリティーズ)は、NYSE(ニューヨーク証券取引所)が計画するトークン化株式の代替取引システム(ATS)について、株式市場の仕組みそのものを変え得る動きだとの見解を示しました。
同社の電子取引担当バイスプレジデントであるリード・ノック氏は、この構想について、機関投資家にとって市場構造の転換点に差し掛かりつつあるとの認識を示しています。
そのうえで同氏は、これまで取引時間や決済サイクルに制約されてきた株式市場が、より柔軟かつ効率的な運用へ移行する可能性があると指摘しました。
規制当局の承認を前提とする同プラットフォームでは、トークン化された株式やETF(上場投資信託)の24時間取引および、ほぼ即時の決済の実現が想定されています。
これが実現すれば、投資家は時間帯に縛られずに取引できる環境が整うほか、決済待ちによって資金が拘束される期間の短縮も見込まれます。
さらにノック氏は、この仕組みを「2.0」の市場シフトに近いものだと説明し、ウォール街がトークン化を本格的に受け入れる段階に入りつつあるとの見方を示しました。
株式・ETFのトークン化を視野に
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ノック氏によると、NYSEが計画するトークン化株式ATSは、仮想通貨(暗号資産)ネイティブの並行市場を新たに立ち上げるものではないといいます。
既存の米国市場規則の枠内で運営される一方、ブロックチェーンベースの決済インフラを組み込む設計が想定されています。
具体的には、カストディ(資産保管)と決済はDTCC(米国証券保管振替機関)に引き続き紐づけられる枠組みを維持するとしています。
取引についてはNBBO(National Best Bid and Offer)要件に準拠し、米国内の取引所全体で最良の買値と売値が反映される仕組みになると説明しています。
これにより、市場間の流動性が分断される事態を回避することが意図されています。
ノック氏は、初期段階ではリテール(個人投資家)主導の取引が見込まれるとしながらも、その影響は個人投資家にとどまらず、市場全体へ波及する可能性があるとの見方を示しました。
TDセキュリティーズが機関投資家向けビジネスに重点を置いていることから、同社はトークン化が取引時間、担保管理、決済サイクル、流動性といった市場の基盤インフラ全体に影響を及ぼす可能性を視野に入れています。
これらはいずれも大手金融機関のオペレーションを支える中核的な要素に位置付けられます。
トークン化の動きは2024年に加速しており、業界データによると、オンチェーンのRWA(現実資産)発行においてはプライベートクレジットおよび米国債商品が大部分を占めてきました。
仮想通貨市場全体のボラティリティ(価格変動)にもかかわらず、トークン化資産への資本流入は継続しており、ブロックチェーンベースの決済・所有モデルに対する機関投資家の関心が持続していることがうかがえます。
トークン化株式は世界の株式市場全体から見れば依然として限定的な規模にとどまるものの、その拡大は伝統的な金融商品を規制の枠組みの中でオンチェーンへ移行させる動きが着実に進展していることを示しています。
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トークン化株式の領域では、NYSEのATS計画以外にも大手プラットフォームによる参入の動きが相次いでいます。
大手仮想通貨取引所Kraken(クラーケン)は、欧州市場においてxStocksを通じたトークン化証券取引を開始しており、規制対応を前提としたトークン化株式サービスの展開を進めています。
一方、NYSEのトークン化株式ATSについては、規制当局の承認がなお必要とされており、現時点で具体的な実現時期は明らかになっていません。
TDセキュリティーズのノック氏が言及した「市場構造の2.0シフト」がどのような形で具体化されるのかは、今後の規制動向と市場参加者の対応を含めて、引き続き注視される局面にあります。
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Source:TDセキュリティーズ
サムネイル:AIによる生成画像


