Emirates Global Aluminium(EGA、中東最大級のアルミニウム生産企業)が、一部の供給契約を停止した。
ブルームバーグは、イランのミサイルとドローンが3月28日に主要なアル・タウィーラ製錬所を損傷したことを受けての措置と報じた。
「不可抗力(force majeure)」は、戦争や自然災害、パンデミックなど、当事者の制御を超えた予見困難かつ異常な出来事によって契約履行が不可能となる場合に適用される法律用語。
企業が「不可抗力」を宣言する場合は、「予測も防止もできない壊滅的な事態が発生したため、契約上の約束を果たせず、責任も問われるべきではない」と顧客側に伝えることを意味する。
アル・タウィーラはアブダビのハリーファ経済特区に位置し、世界最大級の製錬所とされる。EGAによれば、イランによる攻撃で受けた損害の修復には最長12か月を要する可能性もある。
今回の措置は、2025年に鋳造アルミニウム160万トンを生産した施設に長期的な混乱が及ぶことを示唆する。攻撃は、米国とイスラエルによるイランの産業インフラ攻撃への報復とみられる。
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EGAだけではない。アルミニウム・バーレーン(アルバ)も、ホルムズ海峡の閉鎖によって出荷が停止したため、3月初旬に3製錬ラインを停止した。同社もイランの攻撃対象となった。
一方、カタールのカタルムも、カタールエナジーがLNG生産を、エネルギー関連施設への攻撃後に停止したことを受け、3月に操業を停止した。湾岸諸国のアルミニウム生産量は世界全体の約9%を占める。
ウッド・マッケンジーは、中東の紛争により2026年のアルミニウム生産量が世界市場から300万~350万トン減少すると試算している。2025年の世界生産量は7400万トン弱。ロンドン金属取引所のアルミニウム価格は1トンあたり3500ドルを超え、4年ぶりの高値圏に入っている。
ゴールドマン・サックスは、域内の生産減少が続けば3600ドルに達する可能性を警告。ケプラーのアナリストは、さらに事態が悪化すれば4000ドルに向かう恐れにも言及した。
米陸軍士官学校モダン・ウォー・インスティテュートは、アルミニウムを「防衛および産業インフラの基盤素材」と位置付け、米国のアルミニウム輸入の22%が中東由来であると指摘した。LMEの倉庫在庫は5月以降約60%減少し、さらなる衝撃への備えはほとんど残っていない。
すでに原油高と航路混乱、イラン情勢に起因する連鎖的危機に動揺する世界経済にとって、アルミニウム供給逼迫は新たなインフレ要因となる。湾岸由来の高品質アルミニウムに依存する航空宇宙や自動車産業など、各業界へのコスト圧力が高まる。
今後の交渉が続く中、注目は停戦の持続やホルムズ海峡の全面再開に集まる。今後数か月でアルミニウム不足と価格高騰がどこまで進むかは、その帰趨にかかっている。
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